(一人寂しく聖夜の夜を過ごす男) 「あの、少しお時間よろしいでしょうか?」 (シスターが話しかけてくる) 「ん?」 「あ、いえ……何だか落ち込んでいるように見えたので」 「ええ、まあ」 「聖歌隊のコンサートをやるんです。でも人が来てくれなくて……」 (悩む男) 「じゃあ、ちょっとだけ」 「ありがとうございます!」 (連れられて教会へ。キラキラして綺麗) (中では荘厳さよりも柔らかい空気を感じる。あまり寒くはない) 「開演までもう少し時間があるんです。寒い中でしたし、ハーブティーでもいかがでしょう?」 「うーん、それじゃあお言葉に甘えて」 (促されるままに座ると目の前に何か箱が置いてある。気になる男は箱を開く) 「オルゴール?」 (箱の中には3つのオルゴールと4体の女の子のミニチュアが入っている) (ミニチュアの前に名前が彫られているらしきプレートが付いているが、プレートは5枚ある) (余っているプレートの後ろにももう一体人形が入りそうな場所がある) 「O、L、I、何だろ」 ‘(最後まで読めない) (シスターがハーブティーを持ってくる) 「そのオルゴール、聴いてみます?」 「いいんですか?」 「ええ。きっと喜びますから」 (3つ入っているオルゴールのねじを巻く。心地よい音色が流れてくる) (透き通るような安らぎを感じると共に眠くなってくる) 「……」 (場面転換。シスターが男を起こす) 「聖歌隊の準備ができました。開演ですよ」 「ん……あ、はい」 (目の前からオルゴールは無くなっている) (開演。シスターはパイプオルガンを弾く) (聞き惚れる男。数曲後) 「あのー、どうでしょう?」 「う、うん。何か……すーっと入ってくるようなそんな感じで……良かった」 (顔を明るくする聖歌隊の面々) 「やった!」 「練習してきたもんね。ようやく人に聞いてもらえて嬉しいな」 (ちょっと間。聖歌隊の一人が男に興味を抱く) 「そういえばあなたはどうしてここに?」 「いや、その」 (口ごもる) 「わたしたちと同じじゃないかな。この夜にぽつんと……」 「うっ」 「いきなり失礼だよ……」 「でも、何だか親近感が湧くよね。ねっ?」 「は、はあ」 (聖歌隊の一人のテンションに押される) 「わたし、エルマ。よろしくね」 (O:? R:Rosalia G: Giulietta E:Elma L:Letizia) (ロザリア、ジュリエッタ、エルマ、レティーツィア) (もう一人は不明) (可愛いタイプの女の子、エルマ) 「あ、はい……よろしく?」 「みんなも覚えてもらおうよ」 「まあ、それもいいかな」 (クールな感じの女の子レティーツィア(レティ)、のんびりした女の子ジュリエッタ、気の強そうな女の子ロザリア) (何だか彼女たちの名前に憶えがある男) 「そうだ!」 (突然声を上げるエルマ) 「ねえ、あなたも歌ってみない?」 (勢いに押されて歌の練習) 「難しい……」 「でも上手だよ。練習したらもっと歌えるよ」 「ふふふ」 (楽しそうに見ている最初のシスター) 「ここに来てくれて、こんなに歌も上手だなんて、わたしたちの運命の人かも」 「はあ」 「ねっ、今度はこの歌を歌ってみない?」 「アイリス、それって」 (聖歌隊の一人が何か言おうとするけど考え込む) 「いいでしょ、きっとこの人なら大丈夫」 (楽譜を渡される。何か不思議な感覚がする) 「これは?」 「ふふ、それは聖歌隊に伝わる秘蔵の楽譜です」 「秘蔵、ってそんな大事なもの」 「それだけ貴方に感じるものがあったということですよ」 (ちょっと歌を声に出してみる。妙にしっくりくるような感じで、聞き覚えがある) 「何だか歌えそうな気がする」 「ほんと? じゃあわたしたちと合わせてみようよ」 (合唱) (歌っている間、心地よさを感じる。途中で聖歌隊のメンバーが歌っているパートがオルゴールの音色と同じ旋律であることに薄らと気付く) (少しずつ体が女性へと変化していく) (歌唱が徐々に低音のパートから高音のパートに移行する) (聖歌隊のメンバーと同じパートへと移行する) (歌が進行し性別が変わり切ると今度は体が小さくなり、材質も変化する) (最後の音を出すとともに体が固まり、ミニチュアの人形へ変化しきる) (動くこともできず状況に戸惑う。聖歌隊のメンバーも同様にミニチュアの人形になっている) 『あ、あれ?』 『やっぱり、運命の人だったんだ』 『びっくり……』 『私たちと同じになっちゃった』 『これは一体?』 (異常事態だが不思議と焦りが出ない) 「どこから説明すればいいのでしょう……とりあえず、元に戻れないなんてことは言わないので安心してください」 (聖歌隊の正体について。彼女たちはオルゴールのミニチュア人形だったがオルゴールのねじを巻いてくれる人がおらず埃を被っていた) (シスターは天から降りてきたという天使で、聖歌隊のオルゴールに魔法をかけて人形たちを人間の姿にしていた) (ただしクリスマスの夜にしか人間の姿にはなれない) (先ほどの楽譜は聖歌隊のオルゴールの元々の音色) (聖歌隊のオルゴールの人形には一つだけ空きの場所があった) 『そうだ、折角わたしたちと一緒になったんだから、それっぽい名前も欲しいよね』 『名前?』 『そう、聖歌隊の一員としての名前』 『入った覚えは無いけど』 (悩むエルマ) 『さっきのあなたの歌声とっても綺麗だった。でね、そうだなー、 『ねえ、もう一度歌おうよ。今度はもっとうまく歌えるよ』 『歌うって言われてもどうやって?』 「私が手伝いますね」 (シスターによって聖歌隊のメンバーと一緒にオルゴールの台座に置かれる) (シスターがオルゴールのねじを回す) (オルゴールの音色が流れ出す) (聖歌隊のメンバーと繋がっているかのような感覚になる) (心地よい感覚と共に歌う) (オルゴールの音色が二周した後、止まる) (先ほどの感覚にやはり戸惑う) (聖歌隊のメンバーもまた驚き気味に) 『何だか……今までで一番気持ちよく歌えたね』 『うん。こんなの、はじめて』 「みなさん……本当に、素敵な歌でした」 (ぽろぽろ涙を流しているシスター) 「私、あの、感動しちゃって……」 (ミニチュアなので表情は変わらないが聖歌隊のメンバーが喜んでいるのが手に取るように分かる) (最初の寂しさが嘘のような青年(現在、聖歌隊の少女のミニチュア)) (場面転換。青年、元の姿に戻してもらう) (聖歌隊のメンバーはミニチュアのまま) 『ありがと。わたしたち、夢がかなっちゃった』 (一度「一つのオルゴール」になったからかミニチュアの聖歌隊の声が聞こえる青年) 「いや、こっちも楽しかったよ」 (オルゴールをよく見る) 「あれ」 (錆びて読めなかったもう一枚のプレートの”OLIVIA”の文字がはっきり読めるようになっている) (突然鐘の音がなる) 「あ、もう十一時ですね」 「もうそんな時間か。それじゃあ……」 『あ、待って!』 「え?」 『わたしたちのこと、持って行ってくれないかな?』 『折角出会えたんだし、この場限りなんて寂しいな』 『一人で帰るの寂しくない?』 「は、はあ」 (シスターを見る) 「私からもお願いします。オルゴールは、ねじを回す人がいないと寂しいんですよ」 『そうそう』 (うーん、と唸った後) 「それじゃあ、持ってこうかな」 (大喜びの聖歌隊) (微笑むシスター) (苦笑いの青年。今日の出来事をしっかり胸に刻む) (シスターに見送られ、教会を後に) (場面転換。青年の自宅) 「ふう」 「おかえりなさい」 「は?」 (なぜかシスターがいる) 「何でここに……」 「私も一人じゃ寂しくて……」 「あ、ああ……そうなんだ」 「それに、私がいないとねじが回せないじゃないですか」 「え、どういう?」 「貴方も聖歌隊の一人なんですから」 (青年苦笑い) 「入るって言った覚え無いけど」 『強制だよ、強制』 (その後青年はオルゴールのねじを回したり自分もオルゴールの一部になってねじを回されたりしたという) (クリスマスには人の姿になった聖歌隊と色んな歌を歌ったりしたとかいう) ・聖歌隊のオルゴールを最初に出すべきなのでは? ・聖歌隊のメンバーの名前をどこで出すのか? ・青年にも聖歌隊の少女としての名前を付けたい気がする (没場面) (4人くらいいる) 「おかえり! あれ、その人は?」 「コンサートに来てくださった方ですよ」 「へー、珍しいね。いつもやるって言っても誰も来ないのに」 「ちょっと引っ張ってきちゃったんです」 「えー……結構グイグイ行くんだね」 「えーっと、聖歌隊、のみなさん?」 「あっ! ごめんなさい、ちょっと話し込んじゃって。すぐに始まりますから。あ、今飲み物もご用意しますね」 「いや、そこまでは……」 (最初に呼び止めたシスター、飲み物を取りに行く) (ハーブティーか何かが出る) 「聖歌隊も準備ができたようです」